- 更新料発生の経緯からの検討
- 更新料の法的性質からの検討
- 更新料の社会的承認からの検討
今回は、「更新料の社会的承認からの検討」について、大阪高裁の考えを説明します。
社会的承認というのは、更新料が世の中でどのくらい認められているかということです。
更新料の法的性質からの検討の続きです。
【賃貸借契約更新に対する異議権の放棄に対する対価】
これは、大家さんは、更新を認めることによって、契約の更新に対して異議を述べる権利を放棄しているのだから、その対価として、更新料をもらうのだという意味です。
今回は、「更新料の法的性質からの検討」について、大阪高裁の考えを説明します。
まず、前提として、「法的性質からの検討」というのは、どういうことでしょうか。それは、「法律的に説明のつくお金か。」ということです。
たとえば、お店で商品を買うとき、店員から、「代金として、10,000円、消費税500円、保証料1,000円です。」と言われたら、「え!保証料って何?」と思います。当然、お客さんは、「保証料って何ですか。」と聞くはずです。
このとき、店員が、「この商品には、定期的なメンテナンスが必要ですが、そのメンテナンスサービスを2年間無料で受ける料金です。必要がなければ、お支払い不要です。その場合は、メンテナンス時に実費を頂くことになります。」と説明したとします。
すると、お客さんは、「そうか、メンテナンスサービスの料金(メンテナンスという別のサービスを受けるための料金)ですか。わかりました。」となります。
このような説明ができないとすると、そのお金は法律的に説明できないお金であり、そんなお金を取るということは、お客さんを適当に言いくるめて、説明のできないお金を取ったということになります。
借家契約の場合、大家さんは、賃料や敷金以外に礼金や更新料というお金を借家人から受け取りますが、賃料は、部屋を借りる対価、敷金は家賃支払や原状回復の不履行があったときのための担保、という法律的な説明がつきます。ところが、更新料は、この説明が難しいのです。
まず、更新料発生の経緯からの検討ですが、大阪高裁の判決は、どんな考えを述べているのでしょうか。
大阪高裁の考えを簡単にまとめると、次のようになります。
今回の判決が更新料条項を無効とした理由はどうだったのでしょうか。
まず、事案の概要を見てみましょう。
本件は、大家さんが、借家人を被告として、京都地方裁判所に未払いの更新料の支払いを求める裁判を起こしたところ、京都地方裁判所が、更新料条項は消費者契約法10条に違反して無効であるという理由で大家さんの請求を認めなかったので、大家さんが、大阪高等裁判所に控訴したという事案です。
平成22年5月27日に、大阪高等裁判所から更新料条項を無効とする判決が出ました。これで、大阪高裁では3件目の無効判決です。大阪高裁では、更新料条項を有効とする判決も1件ありますので、現時点では、大家さん側から見ると1勝3敗です。
1勝3敗という数字もさることながら、今回の大阪高裁の判決の内容は、2年の賃貸借期間に対して、2ヶ月分の更新料を定める更新料条項を無効としたことが衝撃的でした。
そこで、これから何回かに渡って、
- 今回の判決の内容
- 今回の大家さんに与える影響、特に更新料返還請求裁判の多発の可能性
- 大家さんの対抗策
を考えてみたいと思います。
どんな時に使う?
大家さんが家賃を増額したいときは、まず、借主に対して、家賃を増額することを通知します。この通知は、後でいつ通知したかを証明する必要があるので、実務上は、必ず内容証明郵便によって通知します。
この通知を受け取った借主が、素直に増額に応じれば一件落着ですが、普通は簡単には増額に応じないでしょう。この場合、借主は、いままでの額の家賃を大家さんに支払っておけば、何ら法的な責任を問われません。
大家さんとしては、どうしても家賃を増額したいという場合は、まず賃料増額を求める民事調停を起こし、この民事調停で調停が成立しなければ、賃料改定の訴えを起こさなければなりません。
借主が家賃の増額に応じない場合に、強制的に家賃を増額するには、大家さんは、必ずこの賃料増額の民事調停 → 賃料改定の訴えという手続きを取らなければなりません。
その代わり、賃料改定の訴えで勝訴した場合には、判決で認められた賃料と借主が実際に支払っていた賃料の差額を、賃料増額の請求をした日に遡って請求できます(このため、いつ増額の通知をしたかを内容証明郵便と配達証明で立証する必要があるのです。)。さらに、この差額について、増額請求をした日から支払いを受けた日まで10パーセントの利息を請求することができます。
どんな時に使う?
裁判所で、借主が借りている部屋を明け渡す調停や和解が成立した場合、あるいは借主が借りている部屋を明け渡すように命じる判決が下された場合には、借主は、これらの調停、和解、判決に従って、借りている部屋を明け渡さなくてはなりません。
この場合、借主が、自主的に借りている部屋を明け渡してくれれば問題ありませんが、居座っている場合には、これらの調停、和解、判決に基づいて、裁判所の手続きによって強制的に部屋を明け渡させることになります。現実に使用して生活している部屋から、強制的に借主を排除することになりますので、最後の手段ということになります。
どんな時に使う?
たとえば、借主が家賃を3ヶ月以上滞納しているとか騒音を出して周りから苦情が出ているなどの場合に、大家さんは、借主に対して、滞納している家賃を請求したり、騒音を出さないように警告したりします。
これに対して、借主が素直に応じてくれれば問題ありませんが、借主が滞納を続けたり、騒音を出し続けたりした場合は、法的手続きをとる必要がでてきます。
この場合、単に滞納している家賃を払ってほしいというだけであれば、内容証明郵便を出した上で借主と交渉する、少額訴訟を提起する、支払督促の申立をするなどの方法で解決することが可能です。
また、その借主に出ていってほしいという場合でも、内容証明を出した上で話し合いをしたり、民事調停で話し合いをしたりして、自主的に出て行ってもらうという場合もあります。
しかし、借主が、家賃の滞納を続けながら出ていかない、あるいは騒音を出し続けながら出ていかないなどという場合は、明渡し訴訟を起こして、裁判所から明渡しを命じる判決を出してもらうしかありません。