今回は、「更新料の社会的承認からの検討」について、大阪高裁の考えを説明します。
社会的承認というのは、更新料が世の中でどのくらい認められているかということです。
更新料の社会的承認からの検討
大阪高裁の判決によると、
- 民家員賃貸住宅における更新料支払条項は、全国的にみると決して一般的なものではなく、首都圏、愛知、京都、滋賀、奈良、沖縄等が多いが、大阪、兵庫等
の大都市でも更新料はほとんど徴収されておらず、地域によって大きなばらつきがある。その意味では、本件更新料が、日本全体で社会的な承認を得ていると評価できるものではない。 - (資料によると)更新料額は月額賃料の1か月未満が殆どであり、更新料額が全国で最も高い京都でも月額賃料の1.4月である。
- 国交省の賃貸住宅標準契約書には、貸主が更新料を取得する旨の規定はかれていない。実際にも、公営住宅や住宅都市整備公団の住宅では、更新料は徴収されていない。
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住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫が組織変更)は、旧住宅金融公庫が融資して建築された賃貸借建物について、賃貸人が賃借人から更新料を徴収すること
は、賃借人にとって不当な負担となることを賃貸の条件とする場合に当たるとの理由で、禁止している。 -
生活保護法において、賃借人である生活保護受給者に対し、賃貸借契約における更新料の扶助がおこなわれ、平成18年当時、年間5万件、約25億円もの国
家予算が支出されているが、これは、現実問題として、生活困窮者が更新料を払えず、それを理由として賃貸住宅から退去を迫られる事態を避けなければならな
いことから、やむを得ず更新料の扶助を行なっているものであり、国の生活保護行政において、賃貸住宅の更新料を合理的な制度として認めているのではない。
大阪高裁は、以上のような点を指摘して、更新料は、社会的承認を得られた合理的制度であるとは到底認められないとしています。