これまで説明してきたとおり、今回の大阪高裁の判決は、
- 更新料発生の経緯からの検討
- 更新料の法的性質からの検討
- 更新料の社会的承認からの検討
という3点から更新料条項の合理性を徹底的に検討し、更新料条項を「賃借人の利益を犠牲にし、賃貸人や賃貸住宅管理業者の利益確保を優先した不合理な制度」と言い切りました。
しかし、いかに不合理な制度であっても、大家さんと借り主が契約として合意した以上、何らかの「法律的な根拠」がなければ、更新料条項を無効とすることはできません。この「法律的な根拠」というのが、消費者契約法10条です。
消費者契約法というのは、消費者と事業者の契約の効力を規制する法律です。この法律は、簡単に言えば、事業者がその情報力や交渉力の格差を利用して、消費者に不利な契約条項を押しつけた場合に、その契約条項を無効にすることによって、消費者を保護する法律です。
個人が住居としての部屋を借りる場合、その借り主は「消費者」であり、個人でも法人でも、商売として部屋を貸している場合、その大家さんは「事業者」です。従って、この借り主と大家さんの賃貸借契約には、消費者契約法が適用されるのです。
消費者契約法10条によると、次の2つの条件にあてはまる契約条項は、無効になります。
- 一般の法律の規定より消費者の義務を重くする規定であること
- その内容がかなりひどいもので、消費者の利益を一方的に害していること
まず、「1 一般の法律の規定より消費者の義務を重くする規定であること」ですが、この点について、今回の判決は、民法や借地借家法という一般の法律と比較して、消費者である借り主の義務を重くする規定であるとしています。
そもそも、民法や借地借家法などの一般の法律の規定には、借り主に更新料やこれに類するものを払うことを義務づけたものはありません。
また、既に述べたように、更新料条項は、法的性質を説明できないものですから、一般の法律の規定にはない特別の義務ということになります。
従って、更新料条項は、「一般の法律の規定より消費者の義務を重くする規定である」と言えます。