どんな時に使う?
裁判所で、借主が借りている部屋を明け渡す調停や和解が成立した場合、あるいは借主が借りている部屋を明け渡すように命じる判決が下された場合には、借主は、これらの調停、和解、判決に従って、借りている部屋を明け渡さなくてはなりません。
この場合、借主が、自主的に借りている部屋を明け渡してくれれば問題ありませんが、居座っている場合には、これらの調停、和解、判決に基づいて、裁判所の手続きによって強制的に部屋を明け渡させることになります。現実に使用して生活している部屋から、強制的に借主を排除することになりますので、最後の手段ということになります。
方法、メリット、費用は?
やり方はどうするか
明け渡しを求める部屋の所在地の地方裁判所に、強制執行申立書という書類を出します。
この申立書類の作成や必要書類の収集は、かなり難しいので、弁護士などの専門家に依頼したほうがよいでしょう。
申立書を出した後に、裁判所にいる執行官という人と執行の打ち合わせをします。明渡し執行を現実に行うのは、この執行官です。もちろん、執行を申し立てた大家さんか大家さんの代理人である弁護士も、執行に立ち会う必要があります。
明渡し執行では、原則として第1回目と第2回目の2回の執行が行われます。第1回目の執行では、執行官が明渡しを求める部屋を訪れ、部屋の中に入って、誰が使用しているか、どのような使用状況かなどの調査をします。もし、借主が不在であったり、借主が施錠して鍵を開けなかったりしても、予め呼んでおいた鍵屋さんに鍵を開けてもらい、部屋に入ります。
執行官は、
①強制執行中であることを記載した書面を部屋の中に貼る
②家財道具類を差押える
③借主に対し、本当に強制執行をする日(つまり借主を強制的に排除する日)を告げる
などの作業をして帰ります。
第2回目の執行では、借主を強制的に排除し、家財道具類を持ち出します。家財道具類のうち、借主に渡すことができず、あまり価値がないと思われるものは、その場で売却するか、1週間未満の売却実施日を定めて売却します。ただし、高価なものについては、別の場所で一定期間保管した上、裁判所の手続によって売却しなければなりません。
もっとも、借主が、第1回目の執行と第2回目の執行の間に、自主的に部屋から退去した場合は、この第2回目の執行は行われません。
利点は何か
明渡し執行は、最後の手段ですから、確実に部屋を返してもらえるということ以外に、ほとんど利点はありません。
しかも、弁護士費用以外に、明渡し執行のときに呼ぶ鍵屋さんの日当、家財道具類の搬出のための人夫の日当、搬出した家財道具を運搬・保管する場合の運送料・保管料など(合計金額は、部屋の大きさにもよりますが、50万円から100万円になることがあります。)は、法律上は借主の負担ですが、お金のない借主が払うことはできないので、結果的に申立をした大家さんの負担となります。
もっとも、このような明渡し執行にまでいってしまう事件はかなり少なく、さらに、明渡し執行までいっても、第1回目の執行から第2回目の執行までの間に、借主が自主的に退去するケースがほとんどです。もちろん、弁護士も、借主に対して、自主的に退去するように説得します。ですから、実際に上記の費用を大家さんが負担するのは稀なケースです。
費用はどれくらいかかるか
① 執行官の手数料
15,000円
② 予納金
65,000円
③ 諸費用
鍵屋さんの日当、家財道具を搬出する作業員の日当、家財道具類の運搬・保管費用などで、通常50万円から100万円はかかります。
④ 弁護士に依頼した場合の弁護士費用
事件の難易度にもよりますが、通常は着手金105,000円、報酬金210,000円です。