どんな時に使う?
大家さんが家賃を増額したいときは、まず、借主に対して、家賃を増額することを通知します。この通知は、後でいつ通知したかを証明する必要があるので、実務上は、必ず内容証明郵便によって通知します。
この通知を受け取った借主が、素直に増額に応じれば一件落着ですが、普通は簡単には増額に応じないでしょう。この場合、借主は、いままでの額の家賃を大家さんに支払っておけば、何ら法的な責任を問われません。
大家さんとしては、どうしても家賃を増額したいという場合は、まず賃料増額を求める民事調停を起こし、この民事調停で調停が成立しなければ、賃料改定の訴えを起こさなければなりません。
借主が家賃の増額に応じない場合に、強制的に家賃を増額するには、大家さんは、必ずこの賃料増額の民事調停 → 賃料改定の訴えという手続きを取らなければなりません。
その代わり、賃料改定の訴えで勝訴した場合には、判決で認められた賃料と借主が実際に支払っていた賃料の差額を、賃料増額の請求をした日に遡って請求できます(このため、いつ増額の通知をしたかを内容証明郵便と配達証明で立証する必要があるのです。)。さらに、この差額について、増額請求をした日から支払いを受けた日まで10パーセントの利息を請求することができます。
方法、メリット、費用は?
やり方はどうするか
賃料の増額を求める民事調停は、原則として紛争の対象となっている部屋の所在地を管轄する簡易裁判所に、調停申立書を提出してください。
また、賃料改定の訴えは、原則として紛争の対象となっている部屋の所在地を管轄する地方裁判所に、訴状を提出してください。賃料増額請求の調停申立書も賃料改定の訴えの訴状も、ちょっと難しい内容なので、弁護士などの専門家に依頼したほうがよいでしょう。
最初の調停期日や裁判期日が、申立書や訴状を裁判所に提出してから1ヵ月後くらいに開かれること、その後は、1ヵ月に1回のペースで調停期日や裁判期日が開かれることは、民事調停や明渡し訴訟と同じです。
ただ、賃料増額の民事調停や裁判では場合は、適正な賃料の額を立証するために、通常、不動産鑑定士の鑑定が行われます。この鑑定費用は、当事者の負担であり、50万円前後です。
利点は何か
賃料改定の訴えで勝訴した場合には、判決で認められた賃料と借主が実際に支払っていた賃料の差額を、賃料増額の請求をした日に遡って請求できます。さらに、この差額について、増額請求をした日から支払いを受けた日まで10パーセントの利息を請求することができます。
費用はどれくらいかかるか
① 裁判所に納める郵便切手
賃料増額の民事調停 2,500円
賃料改定の訴え 6,400円
② 収入印紙
請求額によって増減します。
請求額は、原則として次のように計算します。
1ヶ月当たりの増額分 ×( 増額請求が借主に届いた日から
申立または訴え提起までの期間 + 12ヶ月 )
例えば、8万円の賃料を10万円に増額することを請求し、請求から6ヶ月経過した後に調停を申し立てた場合
(10万円-8万円)×(6ヶ月+12ヶ月)=36万円
その後、調停を1年間行ったが、調停が成立せず、すぐに訴えを起こした場合
(10万円-8万円)×(6ヶ月+12ヶ月+12ヶ月)=60万円
賃料増額の調停を申立てる場合の収入印紙 3,000円
賃料改定の訴えを提起する場合の収入印紙 6,000円
③ 弁護士に依頼した場合の弁護士費用
事案の難易度や増額した金額によりますが、少なくとも157,000円くらいはかかります。