今回は、「更新料の法的性質からの検討」について、大阪高裁の考えを説明します。
まず、前提として、「法的性質からの検討」というのは、どういうことでしょうか。それは、「法律的に説明のつくお金か。」ということです。
たとえば、お店で商品を買うとき、店員から、「代金として、10,000円、消費税500円、保証料1,000円です。」と言われたら、「え!保証料って何?」と思います。当然、お客さんは、「保証料って何ですか。」と聞くはずです。
このとき、店員が、「この商品には、定期的なメンテナンスが必要ですが、そのメンテナンスサービスを2年間無料で受ける料金です。必要がなければ、お支払い不要です。その場合は、メンテナンス時に実費を頂くことになります。」と説明したとします。
すると、お客さんは、「そうか、メンテナンスサービスの料金(メンテナンスという別のサービスを受けるための料金)ですか。わかりました。」となります。
このような説明ができないとすると、そのお金は法律的に説明できないお金であり、そんなお金を取るということは、お客さんを適当に言いくるめて、説明のできないお金を取ったということになります。
借家契約の場合、大家さんは、賃料や敷金以外に礼金や更新料というお金を借家人から受け取りますが、賃料は、部屋を借りる対価、敷金は家賃支払や原状回復の不履行があったときのための担保、という法律的な説明がつきます。ところが、更新料は、この説明が難しいのです。
もう少し詳しくお話しします。
更新料の法的性質には、一般的に、次の3つの説明があります。
- 賃料の補充
- 賃貸借契約更新に対する異議権の放棄に対する対価
- 賃借権強化の対価
今回の大阪高裁の判決も、この3つの法的性質の説明について検討を加えています。
【賃料の補充】
まず、「賃料の補充」という説明ですが、これは、新規賃料と継続賃料の差額を、更新料で埋めるという意味です。
たとえば、ある部屋の2年前の賃料相場は月60,000円だったが、地価の高騰などにより新規賃料は63,000円になっているというような場合、この差額を更新料1か月分(6万円)で埋めると、継続賃料と新規賃料の差が、ほとんどなくなります。
この点について、大阪高裁は、次のように述べて、更新料が賃料の補充であることを否定しています。
「平成3年以降、地価高騰がおさまり、逆に地価が下落して、賃料相場の横ばいないしは下落が認められるようになってからは、賃貸借契約の更新時に、継続賃料と新規賃料との差を更新料で補充するという前提事実が崩れている。」
「仮に更新後1か月経過した時点で退去した場合でも、本件更新料の精算を求めることはできないから、本件更新料につき、使用収益期間との対応が全く認められない。」
これは、分りやすく言えば、更新料が賃料の補充なら、たとえば2年毎に2か月分の更新料を払う場合、更新後3か月で退去した場合には、残りの21か月分の更新料は返さなければならないが、そういう契約になっていないということです。
ちょっと長くなったので、続きは次回に。