まず、更新料発生の経緯からの検討ですが、大阪高裁の判決は、どんな考えを述べているのでしょうか。
大阪高裁の考えを簡単にまとめると、次のようになります。
- 更新料というのは、昭和30年代末ころから、都市圏を中心として始まった。
- 当時地価が高騰して、新規賃料が上昇したため、新規賃料と継続賃料の差が拡大した。
- そこで、大家さんとしては、継続賃料を新規賃料の水準まで増額したかったが、正規の法的手続きである賃料増額請求をとらずに、更新料という名目で金銭を受け取ることによって、脱法的に賃料の値上げを図った。
- その後、平成3年以降、地価が下落し、賃料相場が横ばいないしは下落するようになったが(つまり、更新料によって新規賃料と継続賃料の差を埋める必要はなくなったが)、大家さん側は、賃貸借契約期間を1,2年の短期に設定して、契約更新時に更新料をとるという利益獲得方法の旨味に目を付け、一部の地域では、引き続き、積極的に更新料徴収制度の導入を進めた。
- しかも、不動産業者は、更新料の一部を更新料手数料として徴収できる方法を取り入れ、一部の地域で、不動産業者の利益のために、従前にも増して、積極的に更新料徴収制度の導入を進めた。
- 本件の契約でも、不動産業者は、契約更新に要するコストや時間はほとんど不要であるにもかかわらず、2年毎の契約更新時に更新料手数料15,000円が取得できる内容となっている
- 本件の賃貸物件の敷地の路線価も、平成18年から平成21年にかけてほぼ横ばいであり、地価が高騰して新規賃料と継続賃料との間に格差が生じる状況にはないので、更新料によって新規賃料と継続賃料の差を埋める合理性はない。
- 結局、平成18年時点では、更新料を認めることに合理性はなく、借家人の利益を害し、大家さんと不動産業者の利益確保を狙った不合理な制度である。
このように、大阪高裁では、更新料制度がどのようにして生まれたかという点まで遡って、更新料制度の不合理性を蕩々と述べています。
しかも、その書き方は、更新料をとる必要性がなくなったのに、大家さんと不動産業者が結託して、自分たちの利益を図るために、借家人からお金を吸い上げていると言わんばかりです。非常に厳しい態度です。
次回は、「更新料の法的性質からの検討」について、大阪高裁の考えを説明します。