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Monthly Archive for: ‘3月, 2012’

 今回から、「大家さんの契約書教室」という題で、アパートやマンションの賃貸借契約書の書き方や書かれている内容の意味について、分りやすく説明します。

 私は、大家さんからの相談を受けるとき、必ず賃貸借契約書(以下、簡単に「契約書」といいます。)を見せてもらいますが、契約書をしっかり作っていない大家さんが、かなりいらっしゃいます。また、契約書に書かれている内容を、よく理解されていない大家さんも多いようです。

ょっと待った!!大家さん!その敷金そんなに返す必要はありません。」という本で書きましたが、大家さんにとっては、契約書が最大の武器です。
ですから、契約書の書き方や内容をしっかりと理解しましょう。

教室の具体的な進め方ですが、国土交通省が公表している「賃貸住宅標準契約書」を題材にして、

  1. 書くときにどこに注意をするか
  2. 書いてある用語や条文はどんな意味か
  3. 大家さんに有利な内容に変更できるか

などについてお話しします。

まずは、標準契約書の1頁目の「1頭書」の「(1)賃貸借の目的物」について見てみましょう。

賃貸住宅標準契約書(改訂版)

 「賃貸借の目的物」という用語は法律的なもので、分りやすく言えば、「貸す物件」ということです。
 ここでは、貸す物件の中身について記載します。

 最初の「建物の名称・所在地等」の欄の中には、「名称」「所在地」「建て方」「構造」「戸数」「工事完了年」の6つの項目があります。
 この部分の書き方については、国土交通省の説明がしっかりしていますので、この説明を見て、正確に書いてください。
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/keiyakushocyuuiten.pdf

 特に、「構造」や「工事完了年」の項目は、契約を締結する上で重要なポイントになります。
ですから、ここの記載が間違っていると、入居者から、「非木造と聞いたので、しっかりしていると思った。」とか「築5年というのは、嘘なの?」というトラブルの原因になりますので、注意してください。

続きは、次回に。。。

 高齢入居者との契約期間中の問題として、高齢入居者の孤独死があります。
まず、これは孤独死だけの問題ではありませんが、高齢入居者が亡くなっても、それだけでは契約は終了しません。当然のことながら、高齢入居者の家財道具は部屋に残っていますので、明け渡しも完了していません。
従って、大家さんは高齢入居者の相続人と交渉して契約を解除し、その上で、高齢入居者の相続人に家財道具を片づけてもらい、部屋を明け渡してもらいます。ここでやっと明け渡しが完了しますので、大家さんは、この時点までの家賃や原状回復費用を請求することができます。

 これまで、高齢入居者を受け入れるに当たって、契約時に注意すべき点や契約書に入れておくと役に立つ条項などを説明してきましたが、これからは、実際に高齢者の入居後に発生する問題について考えてみます。
 高齢者の入居後に発生する問題として最も頭が痛いのは、高齢者に介護が必要となった場合の契約解除の可否と高齢者の死亡の場合の貸室の取扱いです。

 前回は高齢入居者の認知症の程度が重度化した場合の契約の解除についての説明でしたが、それ以外にも契約期間内に賃貸借契約を終了させる必要が生じる場合はいろいろあります。

 賃料不払いや用法違反などは高齢入居者に限らず一般的に生ずる頭の痛い問題ですが、高齢入居者の場合には、契約の途中から賃借人が賃借物件を利用しなくなるケースがしばしばみられます。典型的なケースとしては、高齢者の身体または精神に障害が生じたため長期療養を要することになった場合などがあります。本人や親族から事前または事後に連絡があればまだよいのですが、まったく連絡がない場合もあります。

 前回説明したように、高齢入居者の場合、定期借家契約形態を選択するのが適切ですが、定期借家契約を選択しても、高齢入居者の認知症の程度が重く、賃貸借契約期間の満了を待つことができないときは、契約期間中であっても契約を解除するしかありません。

 これから6回に渡って、高齢入居者を受け入れる際の法的問題点について検討します。ここで対象とする賃貸借は、サービス付き高齢者住宅などの高齢者すまい法の適用を受ける賃貸借ではなく、通常の賃貸借契約です。

 まず、入居に当たって高齢入居者と賃貸借契約を締結することになりますが、ここで最初の法的問題として、契約形態をどうするか、すなわち通常の借家契約を選択するか定期借家契約を選択するか、が出てきます。