内容証明郵便の受け取りを拒否する借主に対抗する別の手とは、直接郵便受けに投函するという方法です。と言っても、これでは何の証拠も残りませんので、ちょっと工夫が必要です。
誰でもいいのですが投函する人以外にもう1人行く、つまり2人で行く必要があります。もう1人は何をするかと言うと、写真を撮るのです。まず書面を封筒に入れる前に、封筒と書面を並べて1枚。これは、封筒と書面の外観を証明するためです。もちろん、書面のコピーはとっておきます。次に建物全体の前あるいはエントランスの前に投函する人が立って1枚、これは、確かに対象となっている部屋に行ったということを証明するためです。
次に、その日の新聞の上に封筒を置き、新聞の日付と封筒の宛名がきちんと写るように一枚。これは、その日の日付と封筒の外観を証明するためです。そして、借主の郵便受けに入れるところを一枚。封筒が少し郵便受けに入った感じで、封筒の宛名が見えるくらいがいいでしょう。また、郵便受けの名前や号室を書いてある部分もきちんと写るようにしてください。これは、最初に用意した封筒を確かに借主の郵便受けに投函したことを証明するためです。借主には、延滞賃料の催促の郵便と解除通知の郵便という2通の郵便を渡さなければなりませんから、この写真を撮る作業は、2回やらなくてはなりません。
これくらいの写真が揃っていれば、とりあえず裁判になっても、延滞賃料の催促の郵便と解除通知の郵便という2通の郵便が借主に渡ってという証明になるでしょう。もちろん、最初に受け取らなかった内容証明郵便は、保管期間経過とか受取拒否などの理由の書いた紙が貼られて戻ってきますから、これも大切に保管しておき、裁判に証拠として出す必要があります。
上記のような写真で配達を証明する方法は、あくまで相手が内容証明郵便を受け取らない場合の対応策ですから、相手が内容証明郵便を受け取らなかったということをきちんと裁判官に理解してもらう必要あります。そのために、戻ってきた内容証明郵便は大切に取っておく必要があるのです。今回写真を撮る作業は、大家さんの息子さんとその友人にお願いしました。
これで、借主との賃貸借契約を解除し、その証拠も残しまたので、借主が何も言ってこなければ、いよいよ明渡しの訴えを提起します。
もっとも、その前に、占有移転禁止の仮処分を申し立てるかどうかを検討する必要があります。「占有移転禁止の仮処分って何?」と思われる方も多いでしょう。次回詳しく説明します。