いよいよ明渡しを求める訴えを提起して、裁判所での審理の始まりです。と言いたいところですが、実はそうはいきません。
ここが大家さんにとって困るところなのですが、訴えを起こしてから実質的な審理に入るまで、2ヶ月以上の期間がかかるのです。つまり、たとえば平成23年5月10日に訴状を裁判所に提出したとしても、実質的な審理が始まるのは、平成23年7月10日ころなのです。
こんなに時間が空いてしまう理由は3つあります。
- 1つ目の理由は、裁判所は、訴状を受け取ってから原則として1ヶ月以内に第1回目の期日を開かなければなりませんが、逆に言うと、大体1ヶ月後にしか第1回目の期日を開いてくれないということです。
- 2つ目の理由は、被告つまり借主は、裁判の第1回期日には、答弁書という書類を出しておけば出頭しなくてもよいということです。しかも、この答弁書には、「原告の請求の棄却を求める。」と書いてあればよく、詳しい反論を書く必要はありません。
- 3つめの理由は、1つの事件の裁判の期日は、原則として1ヶ月に1回しか開かれないということです。
この3つの理由から、平成23年5月10日に訴状を裁判所に提出したとしても、第1回目の期日が開かれるのは平成23年6月10日ころであり、しかも、そこでは、原告の訴状と被告の「原告の請求の棄却を求める。」と書かれている答弁書が読み上げられるだけです。そして、第2回期日は、大体1ヶ月後の平成23年7月10日に開かれるのです。
結局、大家さんとしては、今までの滞納に加えて、2ヶ月分の家賃の滞納が増えてしまいます。このため、大家さんの了解があれば、占有移転禁止の仮処分の後に訴えを提起するという順番ではなく、占有移転禁止の仮処分と明渡しの訴え提起を同時にやってしまう場合もあります。
この事件では、訴え提起が5月9日であり、第1回期日が6月8日午前10時に指定されましたが、案の定、被告(借主)は、答弁書を出しただけで出頭しませんでした。答弁書を出せば出頭しなくてもよいというのは、誰でも知っていることではありませんので、こうした対応をする被告(借主)は、今までにもこうした裁判の経験があるのかもしれません。
6月8日午前10時の第1回期日では、訴状と答弁書が読み上げられ(と言っても、実際に読むわけではなく、単に読み上げたことにするというだけの形式的手続ですが)、第2回期日が7月6日と決まりました。また、被告(借主)はこの第2回期日の1週間前までに反論を書いた書面を裁判所に提出することも決まりました。
第2回期日の様子は、次回に。。。