どんな時に使う?
たとえば、月額10万円の家賃を3カ月分合計30万円滞納している借主がいるとします。大家さんとしては、当然、滞納家賃を払うように請求します。この大家さんの請求に対して、借主が、すぐに滞納家賃を支払ってくれれば問題ありません。
しかし、借主が支払いをしないの場合は、次のような3つの対策をとることが考えられます。
その借主と話し合い、滞納分の家賃の支払いを約束する公正証書(執行認諾文言付きのもの)を作る。
少額訴訟の裁判を起こし、滞納分の家賃を支払うように命ずる判決をしてもらう。
支払督促手続きをして、滞納分の家賃の支払命令に仮執行宣言を付けてもらう。
このような公正証書(執行認諾文言付きのもの)、少額訴訟の判決、または仮執行宣言付き支払命令があれば、強制執行をすることができます。
借主は、家賃を払えないような経済状態ですから、不動産、車、貴金属などの高額の財産をもっているとは考えられません。預金もほとんどないでしょう。
このような場合に、借主が就職していて給料があるのならば、この給料を差押えることが考えられます。
方法、メリット、費用は?
やり方はどうするか
借主の住所地の地方裁判所に、債権差押命令申立書という書類を出します。通常は、借主の住所は、貸している部屋ですから、貸している部屋を管轄地とする地方裁判所に行くことになります。
この申立書類の作成や必要書類の収集は、もちろん大家さんが自分ですることもできますが、ちょっと難しいので、弁護士などの専門家に依頼したほうがよいでしょう。
なお、債権差押命令の申立てをするには、裁判所に収入印紙と切手を納付する必要があります。
利点は何か
借主の給料を差押えると言っても、給料は生活の糧ですから、給料全部を差押えることはできません。差押えることができるのは、給料の4分の1までです。たとえば、給料が月額20万円であれば、月額5万円まで差押えることができます。
この給料差押命令が、借主の勤務先に届くと、勤務先は、差押えられた部分(上記の例の場合5万円)の給料を、借主に対して支払うことができません。
また、この給料差押命令が勤務先に届いて1週間経過した後は、大家さんは、直接勤務先から取り立てることができます。
このように、給料差押えは、勤務先から直接支払いを受けることができる手続きなので、勤務先がしっかりとした会社であれば、かなりの確率で延滞賃料を回収できます(ただし、勤務先がいい加減な会社である場合や、借主に多額の借金があって、他の債権者からも給料差押さえがあった場合は、延滞賃料の回収は困難となります。)。
また、給料差押えを受けた借主は、勤務先に家賃滞納がばれてしまい、かなり格好悪い状況になりますので、延滞賃料の支払いために真剣に努力するようになります。
費用はどれくらいかかるか
①裁判所に納める郵便切手
債権者(大家さん)、債務者(借主)、第三債務者(勤務先の会社)各1名の場合、5,300円分の切手を裁判所に納めます。
②収入印紙
1件4,000円分の収入印紙を裁判所に納めます。
③弁護士に依頼した場合の弁護士費用
請求債権金額によって増減しますが、少なくとも105,000円くらいはかかります。