どんな時に使う?
大家さんがトラブルを起こしている借主と交渉し、なんとか合意に至ったときに使います。
たとえば、家賃を滞納している借主が、遅れている家賃を分割して少しずつ払ってくれると約束したときに、この約束の内容を公正証書にしておくのです。
方法、メリット、費用は?
やり方はどうするか
公正証書というのは、公証役場にいる公証人が作ってくれます。 公証役場はというのは、法務省が作っている役所で、裁判官や検察官を退職した法律のプロが公証人となります。公証役場は各地にあり、たとえば東京都内ならば44か所あります。
そこで、たとえば月額5万円の家賃を6カ月分合計30万円滞納している借主がいる場合に、大家さんがその借主と話し合います。この話し合いの結果、借主が、毎月の家賃に加えて、毎月2万円ずつ滞納分の家賃を払うと約束したならば、公証役場に出かけて、この約束を公正証書にしてほしい相談するのです。
そうすると、公証人が、公正証書の原案を作ってくれますので、これを持ち帰り、借主にその内容を説明します。その後、正式に調印する日取りを決めて、大家さんと借主が公証役場に出かけ、公証人の面前で公正証書に署名捺印します。
この署名捺印にあたっては、本人確認のために、大家さんも借主も印鑑登録証明書と実印を持参することが必要です。 公証役場はどこでもかまいませんが、原則として大家さんも借主さんも公証役場に出かける必要がありますので、貸している部屋の近くの公証役場にお願いすると便利です。
また、公正証書の原案作りや公証人との打ち合わせを弁護士に依頼すると、大家さん自身が公証役場に行く必要はなく、また公正証書の作成もスムーズに進みます。
利点は何か
単なる合意書を作るのではなく、公正証書を作る利点は、借主が約束を破った場合に直ちに給料差押えなどの強制執行ができる点です。
単なる合意書の場合、借主が合意書に定めた約束を破って滞納家賃の支払をしなかったとしても、直ぐに給料差押えなどの強制執行はできません。改めて滞納家賃の支払を求める裁判を起こし、裁判所から判決をもらわなければ強制執行はできないのです。
これに対して、公証人役場で作ってもらう公正証書の場合、その中に「約束を破ったら強制執行をされても異議ありません。」という条項(これを執行認諾文言といいます。)を書いてもらえば、借主が滞納家賃の支払に関する約束を破ったときに、公正証書の記載だけで給料差押えなどの強制執行ができるのです。
ただし、注意しなければならないのは、公正証書の記載だけで強制執行ができるのは、お金の支払いなどに関する約束に限られ、建物明け渡しの約束を破っても、公正証書の記載だけでは強制執行はできません。
費用はどれくらいかかるか
① 公証人に支払う手数料
公正証書で支払いを約束させた滞納家賃の金額によって異なります。
滞納している家賃の額が100万円以下であれば、5,000円です。
② 弁護士に原案の作成や公証人との打ち合わせを依頼した場合の弁護士費用
通常52,500円かかります。