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Monthly Archive for: ‘8月, 2011’

 さて、第2回期日です。この日は借主も出頭しました。

 事前に借主から、いろいろな事情や反論を書いた書面が提出されました。しかし、その内容は、「以前にこのアパートの建て替えの話があり、その時大家さんが、出て行ってくれるなら立ち退き料を払うと言ったから払って欲しい。」とか、「自分は今お金が無くて困っている。」という内容で、裁判で審理する必要のあるものではありませんでした。
 このため、裁判官から、和解の勧告があり、結局1ヶ月後に明け渡すという内容の和解が成立しました。
私としては、5年も家賃を支払っていないこと、内容証明郵便の受け取りを拒否したこと、占有移転禁止の仮処分で執行官が部屋に行った時に居留守を使ったこと、明け渡しの訴えを起こさなければならなかったこと、既に内容証明郵便の発送から3ヶ月以上経過していることなどから、裁判官に1ヶ月の猶予を与える必要はないと強く言いました。
 しかし、借主が、裁判官に、「現在職業訓練を受けていて、それが7月中に終わるので、それまで待って欲しい。」と泣きついたため、裁判官から、1ヶ月待ってあげて欲しいと強く言われました。このため、大家さんに確認を取って、1ヶ月後に明け渡すという内容の和解となりました。その代り、未払いの家賃は毎月1万円づつ払ってもらうことにしました。
 
 借主は、和解で決められたとおり、8月2日に引越ししました。
明け渡しが完了しましたので、大家さんから15万円の報酬を受け取りました。

 結局この事件では、平成23年3月28日に相談を受け、平成23年8月2日に明渡しが完了しましたので、約4ヶ月程度の期間がかかりました。
 弁護士費用も、占有移転禁止の仮処分申立事件がありましたので、合計40万円になりました。
 実費は、占有移転禁止の仮処分事件の保証金5万円と仮処分執行の予納金13,000円が帰ってきましたので、約50,480円でした。

 いよいよ明渡しを求める訴えを提起して、裁判所での審理の始まりです。と言いたいところですが、実はそうはいきません。

 ここが大家さんにとって困るところなのですが、訴えを起こしてから実質的な審理に入るまで、2ヶ月以上の期間がかかるのです。つまり、たとえば平成23年5月10日に訴状を裁判所に提出したとしても、実質的な審理が始まるのは、平成23年7月10日ころなのです。
こんなに時間が空いてしまう理由は3つあります。

  • 1つ目の理由は、裁判所は、訴状を受け取ってから原則として1ヶ月以内に第1回目の期日を開かなければなりませんが、逆に言うと、大体1ヶ月後にしか第1回目の期日を開いてくれないということです。
  • 2つ目の理由は、被告つまり借主は、裁判の第1回期日には、答弁書という書類を出しておけば出頭しなくてもよいということです。しかも、この答弁書には、「原告の請求の棄却を求める。」と書いてあればよく、詳しい反論を書く必要はありません。
  • 3つめの理由は、1つの事件の裁判の期日は、原則として1ヶ月に1回しか開かれないということです。

 この3つの理由から、平成23年5月10日に訴状を裁判所に提出したとしても、第1回目の期日が開かれるのは平成23年6月10日ころであり、しかも、そこでは、原告の訴状と被告の「原告の請求の棄却を求める。」と書かれている答弁書が読み上げられるだけです。そして、第2回期日は、大体1ヶ月後の平成23年7月10日に開かれるのです。

 結局、大家さんとしては、今までの滞納に加えて、2ヶ月分の家賃の滞納が増えてしまいます。このため、大家さんの了解があれば、占有移転禁止の仮処分の後に訴えを提起するという順番ではなく、占有移転禁止の仮処分と明渡しの訴え提起を同時にやってしまう場合もあります。

 この事件では、訴え提起が5月9日であり、第1回期日が6月8日午前10時に指定されましたが、案の定、被告(借主)は、答弁書を出しただけで出頭しませんでした。答弁書を出せば出頭しなくてもよいというのは、誰でも知っていることではありませんので、こうした対応をする被告(借主)は、今までにもこうした裁判の経験があるのかもしれません。

 6月8日午前10時の第1回期日では、訴状と答弁書が読み上げられ(と言っても、実際に読むわけではなく、単に読み上げたことにするというだけの形式的手続ですが)、第2回期日が7月6日と決まりました。また、被告(借主)はこの第2回期日の1週間前までに反論を書いた書面を裁判所に提出することも決まりました。

 第2回期日の様子は、次回に。。。

 仮処分命令の執行のとき、借主は、「よく考えて後で連絡する。」と言ってくれましたが、結局連絡はありませんでした。

 まあ、5年も家賃を滞納して、内容証明郵便を受け取らず、仮処分執行のときも居留守を使うような相手ですから、簡単には出て行かないとは予想はしていました。
 そこで、貸している部屋の明け渡しを求める訴えを、貸している部屋の住所地を管轄する裁判所に提起しました。
 占有移転禁止の仮処分命令の申立書と明渡しを求める訴えの訴状は、書くべきことが実質的に同じですし、証拠や資料も占有移転禁止の仮処分命令の申立書を作るときに集めましたので、訴状は直ぐに作ることができました。訴えの提起にかかった費用は、裁判所に納める印紙代2,000円と切手代6,000円でした。明渡しを求める訴えを提起するときに必要なる印紙代は、明け渡しを求める部屋の固定資産評価額によって決まります。アパートなどでは、建物全体の固定資産額を各部屋の面積で按分し、その金額によって決めます。ですから、同じように明け渡しを求める場合でも、固定資産評価額の低い古いアパートの1部屋の場合は、印紙代は安くなりますが、固定資産評価額の高い新しいマンションの1部屋の場合は、印紙代は高くなります。

 ちなみに、ここまでにかかった時間と費用を、まとめてみましょう。

日付 項目 弁護士費用 実費
3/28 相談 150,000円
4/2 内容証明郵便(解除通知)発送
4/11 内容証明郵便返却 切手代 1,470円
4/16 解除通知を借主の郵便受けに投函
4/18 占有移転禁止の仮処分命令申立 100,000円 印紙及び切手代 4,010円
4/25 占有移転禁止の仮処分命令発令 保証金 50,000円
4/26 仮処分執行の申立 予納金 30,000円
4/27 仮処分執行 鍵屋さん費用 25,000円
5/9 訴え提起 印紙及び切手代 8,000円

ここまでで、時間的には約1ヶ月半、費用的には368,480円がかかっています

訴え提起後の経緯については、次回に。。。